いつか、どこかで、誰かが、自分の書いた文章を読んで、何かを受け取ってくれるのかもしれない。宛先の具体的な像が見えない文章を書いているとき、ときどき、私はそんな風に思う。
絵を描くことでもなく、楽器を奏でることでもなく、小説のようなフィクションを書くことでもなく、私は小説を論じることで、何かを人に伝えたいと思ってきた。それが、自分にとって、最適な領域だったからだし、今もそう思っている。自分が、誰かの文章から、何かを受け取り、生きてきたように、自分も誰かに何かを引き渡すことができたらいい、と。
だから、研究に真摯に向き合いたいと思うし、ひどい思いをしたことを含めて、自分の人生における経験値が、人に伝えるための表現の幅になるように、自分の生を恐れないでいようと思う。
新しい知見を得ることは、私に物事の捉え方に変化をもたらし、それが、研究ーー人に何かを伝えることに深みの繋がればいい、そんな風に思っている。
COMMENT FORM